春
桜餅
からつぽのにほへる桜餅の箱
長谷川 櫂
リハビリの毎日五分さくら餅
鈴木みのり
友だちと分けて小さな桜餅
つじあきこ
チューリップ
チューリップ喜びだけを持ってゐる
細見綾子
チューリップ咲いてエンデバー帰還せり
おーたえつこ
百歳に慰めらるるチューリップ
松井季湖
夏
トマト
注文の包丁届きトマト切る
高橋恵美子
ミニトマトぽこぽこ食うて空青し
おーたえつこ
昼下がりのキスとトマトの成分表
鈴木みのり
祇園祭
東山回して鉾を回しけり
後藤比奈夫
祇園会やフランスパンに歯が負けて
辻 水音
月鉾へへろへろへろとついてゆく
波戸辺のばら
秋
木犀
腕組みを解く木犀の風の中
岩淵喜代子
似たひとを見かけた昼の金木犀
はしもと風里
香り出すキンモクセイと
言ってから
林田麻裕
七夕
飴細工の鶴に紅さす星祭
菊田一平
七夕やペディキュアの赤
もつと濃く
辻 響子
七夕短冊つるす目立たないやうに
松井季湖
冬
小春
小春日や柴又までの渡し船
渥美 清
ふむふむとふくらむシューや
小六月
たかはしすなお
アボカドのスープ緑小春かな
辻 響子
枇杷の花
故郷に墓のみ待てり枇杷の花
福田蓼汀
枇杷咲いて女四代にぎやかな
つじあきこ
昏れ際を光放てり枇杷の花
松井季湖