春
雛
雛よりもさびしき顔と言はれけり
大木あまり
立雛使はぬ部屋の匂ひかな
加藤いろは
通りゃんせ御殿飾りの雛段へ
つじあきこ
つくし
この丘のつくしをさなききつね雨
木下夕爾
つくしんぼ検針員は目もくれず
畑田保寿美
臨月の腹の子暴れ土筆摘む
桐村日奈子
夏
夏の蝶
遠く来て夢二生家の黒揚羽
坪内稔典
空青く夏蝶たちのスクワット
鈴木みのり
揚羽飛ぶ島のおとこに島時間
たかはしすなお
日盛
打ちゆがむサンドバッグや日の盛
奥坂まや
胸反らしおんどりがゆく日の盛
火箱ひろ
日盛を積んで「高級落とし紙」
辻水音
秋
曼珠沙華
曼珠沙華来るなくるなと人を呼ぶ
大場佳子
かさこそとオカン出てくる
曼珠沙華
鈴木みのり
曼珠沙華ガラスの扉のあちら側
はしもと風里
秋高し
天高し花束のごと子を抱けば
山崎和賀流
天高しおもちゃのコップすぐ溢れ
種田果歩
秋高し友あちこちに散らばって
笹村恵美子
冬
水仙
水仙や古鏡のごとく花をかかぐ
松本たかし
水仙や岬の先に父眠る
波戸辺のばら
通りすがりの山門不幸水仙花
笹村恵美子
大根焚
日だまりは婆が占めをり大根焚
草間時彦
大根焚連れ来て帰す寺のバス
辻 水音
一の釜あいて二の釜大根焚
火箱ひろ