春
桜
夜桜やひとつ筵に恋敵
黛まどか
黒船ガ来タ日ノ記憶サクラ咲ク
火箱ひろ
いつか見たやうな桜の下を行く
はしもと風里
野遊び
野遊びの着物のしめり老夫婦
桂信子
野遊びの人形どれも帰らざる
笹村恵美子
チョコパイとおっぱい持って野に遊ぶ
波戸辺のばら
夏
万緑
万緑の中や吾子の歯生え初むる
中村草田男
万緑の須磨の離宮にうつらうつら
おーたえつこ
飛行機雲トイレは緑の真ん中に
笹村恵美子
蟬
子を殴ちしながき一瞬天の蟬
秋元不死男
黄檗の蟬はしいんと鳴き始め
たかはしすなお
みんみんや改札口で止められて
辻 響子
秋
秋風
ローソンに秋風と入る測量士
松永典子
長椅子の赤い毛氈秋の風
笹村恵美子
ドア開けて腹ペコたちと秋風と
火箱ひろ
団栗
どんぐりを拾ふ良寛さまの道
片山由美子
団栗落ちる絶対誰かゐる
辻 響子
どんぐりを探していつの間にひとり
はしもと風里
冬
時雨
酢につけて生姜紅さす夕時雨
鈴木真砂女
片時雨六年会っていない人
林田麻裕
時雨華やぐ突っ立っている
ベルボーイ
たかはしすなお
臘梅
臘梅を月の匂ひと想ひけり
赤塚五行
ジョギングのここで臘梅匂ふはず
松井季湖
蝋梅や夕日にほろと融けさうな
おーたえつこ