2015年

 

春  紫雲英


どの道も家路とおもふげんげかな

   田中裕明


げんげ田へ太鼓の音の近づけり

   畑田保寿美


げんげんや一生友達だなんて

   辻 水音



山笑う


山笑うきっと大きな喉仏

   鳴戸奈菜


粥・団子腹にぼったり山笑う

   たかはしすなお


校舎からシナモンの香や山笑う

   つじかりん


夏  熱帯夜


手と足と分からなくなる熱帯夜

   五島高資


熱帯夜子の足ぬつと伸びてきし

   種田果歩


羊になつたり獏になつたり熱帯夜

   松井季湖

  

 

夏  薔薇

 

薔薇の雨膝をゆるめてすわりけり

   ふけとしこ

 

薔薇園に吹く海の風山の風

   波戸辺のばら

 

薔薇の門この先入ツテハナラヌ

   辻 響子

 




秋 コスモス


コスモスににらみをきかす赤ん坊

   夏井いつき


コスモスやかなり勝ち気な食べっぷり

   笹村恵美子


やわらかにコスモス畑崩壊す

   すなお



秋 稲架


空稲架に老人がたつそれが兄

   大牧 広


稲架組むや遊びのたらぬ三輪車

   畑田ほずみ


稲架の穂は真っすぐに地を指して

   種田果歩




冬  冬の月



寒月や喰ひつきさうな鬼瓦

   小林一茶



寒月や父の襁褓のずっしりと

   松井季湖



冬満月ジェンガー一瞬にて崩る

   笹村恵美子

 

 冬  枇杷の花

 

遠ざけし人恋ふ枇杷の咲きてより

   鷲谷七菜子

 


枇杷咲くや父の字のある謡本

   加藤いろは

 


家計簿に一行日記枇杷の花

   つじ あきこ